歯科衛生士徒然草 第十七話

§第十七段

書店に次々と並ぶ新刊を眺めていると、出版業界を頼もしく思うと同時に、私はほんの一握りの本しか読んでいないという事実、つまり情報収集の限界を実感 し、途方に暮れる。学会や研究会についても然り。あふれる情報との付き合い方に悩む人は、多いのではなかろうか?

私の情報収集法は、2つの学会(障害者歯科学会・公衆歯科衛生研究会)への毎年参加を柱とし、次官が許す限り近隣で催される学会などを覗くことだ。雑誌 は、歯科衛生士雑誌の定期購読のほか、建築・デザイン・保育など、歯科とは直接関係ない分野のものを一冊読むことにしている。違った世界を知るためだ(蛇 足だが、ビッグコミックオリジナルなどの愛読雑誌は、勉強とは別に欠かさず読んでいる)。書籍は興味あるテーマや好きな作家のものを続けて読むほか、「毒 書の会」という会合に参加している。

この「毒書の会」、会員は十数名で、教授・会社員・酒屋・経営者・主婦・学生などさまざまな肩書きの人間で構成されている。会の内容は、メンバーが順に 読んでほしい本を紹介する。毎月最終土曜日に全員が指定書物を読んで集まり、感想などを述べ合う。本はさまざまなジャンルから選ばれるため、本会に参加し なければ自らは手にしない本に出会うことができる。読後感の違いもおもしろく、発見も多い。意見が異なるほど得るものは大きい。

「毒は薬、薬は毒。人間が病んでいる。その人間が創る状況も病んでいる。その限り毒を呷って薬に転じ、薬を転じて毒を吐く、そんな作業が病高じて死を招 くようなことのないために必要ではないか。毒書、心に苦し、されど、毒書、心を癒す。状況の癒しなどおこがましくて言えないが、せめて狭い了見の拡大とし ての心の癒し、そのために必要な薬になる毒書にはこれからもたくさん会いたいものだ」というのが主催者の弁。たまに毒気にあたるのもちょっとした快感で、 なかなかよいものだ。興味のある方はホームページをご覧あれ。
http://ww8.tiki.ne.jp/~masak/dokusyo.html

何事につけ、感心のあるテーマはじっくり付き合う。そして、興味の範囲外だったテーマにも目を向けることのできる環境をそれぞれに用意したいものだ。