チョー面白い話

http://gigazine.net/ より

「第2の脳」があなたの考えや感情をコントロールしている

人が物を考えたり感情を抱いたりするのには「脳」が重要な役目を果たしているというのは周知の事実。しかし、近年の研究では頭蓋骨にある「脳」ではない「第2の脳」が人の行動をコントロールしているということがわかってきています。科学系YouTubeチャンネルのAsapSCIENCEが第2の脳とは一体何なのか、人の感情や行動はどのようにコントロール可能なのかをムービーでわかりやすく解説しています。

You Have A Second Brain – YouTube

私たちの頭蓋骨の中にある脳では、100億個のニューロンが電気信号を送って互いにメッセージをやりとりし、無意識的に感情やパフォーマンスを左右しています。

これら脳の働きが「あなた」というものを形作っています。

脳は体にとって不可欠で、人のアイデンティティをつかさどる部分。脊椎動物の神経系における中枢となっています。

しかし、「考える」「感じる」といったことが脳や神経系だけではなく、「第2の脳」によって行われていることはあまり知られていません。

脳が声帯・心臓・肺・腸といった体の各部分と接続し、コミュニケーションを行うには迷走神経が使われます。

迷走神経は「戦うか逃げるか反応」が生じる際にも使われます。「戦うか逃げるか反応」とは動物の恐怖に対する反応で、緊張した時やストレスにさらされた時に声が出なくなったり、心臓がドキドキしたり、胃腸が不調になったりという状態を引き起こします。

上記のような反応は「脳から各部へ」送られますが、科学者によると腸神経系の神経線維のうち80~90%は「脳から各部へ」とは逆に「腸から脳へ」信号を送っているとのこと。

腸神経系は食道から肛門にかけて行われる消化運動全体の動きを、脳から命令を送られることなくコントロールしており、例え迷走神経が切断されたとしても、食べ物に反応して機能することが可能です。

私たちの想像以上に腸は「第2の脳」としての機能を果たしているわけです。

現代のように簡単に食べ物が手に入る社会になる前は、人間の行う最も大きな選択は「食べること」に関するものでした。食べても病気になったり死んだりしないのか、体にエネルギーを与えてくれるのか、を判断することが重要になってくるので、腸と脳の間では直接的なコミュニケーションが行われるようになりました。

例えば、脂肪や砂糖は体にとって重要なエネルギー源であるため、私たちの体は脂肪や砂糖を多く含んだ食べ物を摂取すると脳がドーパミンを放出し「快」を感じるよう進化しました。ゆえに私たちは断続的に糖や脂肪を求めるようになっています。

興味深いのは、体の中で生み出されるドーパミンのうち50%と、セロトニンの90%が腸内のバクテリアによって生み出されているというところ。この2つの物質は人のムードや幸福度、喜びといった感情に大きな影響を与えます。

また、腸内バクテリアは人が「どんな食べ物を欲するか」ということなど、食べ物に対する振る舞いに対しても影響を与えることが判明しています。私たちの食事次第で「どの腸内バクテリアが繁栄するのか」ということが決まりますが、この時、繁栄したバクテリアは迷走神経を通じて脳に「自分たちが好む食べ物を人間が食べるように」と信号を送ります。食べ過ぎを直すために自分以外の糞便を腸内に移植することや、プロバイオティクスを勧める科学者がいるのはこのため。砂糖や脂肪を求めるバクテリアを胃腸内から取り除くことで、欲望を消していくわけです。

また腸内バクテリアは人間の行動も変化させると考えられています。腸内でバクテリアが繁栄しないような無菌環境で育てられてマウスには、自閉症のような行動が見られたとのこと。

そこで研究者らがマウスの脳を調べたところ、セロトニンや、学習・記憶に関係する特定のタンパク質のレベルに大きな変化が見られたそうです。しかし、特定のプロバイオティクスをマウスに与えると、症状は緩和。腸内バクテリアがマウスの行動をコントロールしていたことがわかりました。

また、プロバイオティクスのヨーグルトを30日間食べ続けた人は、バクテリアなしの牛乳を摂取し続けた人よりも不安やうつのレベルが低くなることもわかっています。

さらに別の研究では特定のバクテリアを摂取したマウスは血中のストレスホルモンが少なくなり、学習・記憶テストのパフォーマンスが向上すると判明。

この時、マウスの迷走神経を切断すると、上記に書いたような変化は消失してしまうこともわかっています。

小さなペースメーカーを体に埋め込み、迷走神経を複数種類の周波数で刺激した研究では、健康な人の腸内から送られる信号を模倣することで、抗うつ剤などの治療に反応しない治療抵抗性うつ病が治療できることが報告されています。

現在では「社会集団では将来性がある遺伝子が増えると考えると、マイクロバイオームは社会における向社会的行動を促進する」と考えている研究者も存在します。腸内バクテリアはネガティブな感情に対抗する役目を持ち、人を許したり、子どもを生んだり育てたりすることにもよい影響を与える可能性があるわけです。

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