特別養護老人ホームに入所されている患者さんの
口腔ケアをすることになりました。
今日が初回訪問です。
本田「失礼します。歯科医院からまいりました、本田です。
お口ケアをさせて頂きたいのですが、よろしいですか?」
Mさん「結構です。そうやって何でも勝手に決めて、お引き取り下さい。」
本田「いえ、先日医院長がお口を見せて頂き、お掃除をしたほうがいいと・・・」
Mさん「もうーいいですから」
本田「そうですか。では、ほかのお部屋の方を見て、また後できます」
相手が嫌がったら、とりあえず撤収。基本、怒らせない。
再度、Mさん訪問。
そこに、介護福祉士さんの助け舟。
「Mさん、誕生日に回転寿司行ったんナー」
本田「へー、何を食べたの?」
Mさん「卵」
本田「卵好きなの?」
介護士さんが「昨日も、○○さんが卵焼き作ってくれたやろ」
本田「卵焼き好きなんだ、よかったね。」
ここから、Mさんの怒りが込み上げてきた
「あれは、玉がの賞味期限が切れて困るから作ったんと言っていたのよ。
わたし、もうーなんて言っていいか。そんなの、欲しくないです。
賞味期限が切れるからってねー そんなこと人様に言います?
信じられないでしょう・・・・・・・・・・」
延々怒りを伺いまして
<まずは気持ちを聞くことでこころの扉が開きます。と言うか、
怒りであろうが愚痴であろうが、話してくれるのは、
コミュニケーションの相手として認めてくれたということですね>
本田「せっかく好きな卵なのに、言い方で、気分が悪かったのですね。」
Mさん「そうでしょ。なんだってこの調子なんですから・・・もう嫌になってしまう」
本田「そうですね。それは私だっていやな気分がしますよ。」
Mさん「そうでしょ!私信じられない・・・・」
本田「でも、玉に罪はないから・・・美味しかったでしょう」
Mさん「そりゃねぇー 」と言って、笑って下さった。
この<卵焼き事件> これもヒヤリハットして捉えてみましょう。
嘘はいけませんが、正直に言い過ぎたのではないでしょうか?
このようなことをさぬきでは「ほっこ正直」と言います。
私も介護士さんの立場なら、同じ失敗をしたかもしれません。
どうしたらよかったのか?
今だから言えるのは
「Mさん、卵焼き好きよね。作ろうと思うけど食べてくれる?」
「どうしてー?」と言われたら
「元気付けてもらわんかったらいかんでしょー、インフルエンザに負けないように」
こんな会話もありだと思いますが。
まあ、後ならなんだって言えますがね。
★訪問口腔ケアの後、いつもお茶とお菓子を用意して下さる家があります。
私も時々、お菓子などを買っていくことがあるのですが
大変気を使われる方なので、
あえて、包みをといて「到来物ですけど」と言ってお持ちすることがあります。
これも嘘と言えばウソですが「嘘も方便」・・・
なにはともあれ、相手のこころの扉が開かないことには、
口腔に手を入れることはできないのです。
扉の開け方にも、イソップ物語の「北風型と太陽型」がありますね。
緊急を要しない場合は、やはり手間と時間がかかっても「太陽型」がいいですね。
何故って、私がそうして欲しいから。