1) 口の中には、300~500種類の細菌がいる。
2) 歯牙の表面は、唾液由来の糖たんぱく質である、ペリクル(獲得皮膜・1~10μm)に
覆われている。
3) ペリクルは、脱灰から歯を守っていると同時に、細菌の足場にもなっている。
ペリクルは歯ブラシによる歯磨きでは落とせず、PMTCで除去する。
4) ストレプトコッカスミュータンスは、ペリクルを足場に歯面に付着する。
5)ストレプトコッカスミュータンスは(G Tase)(F Tase)などの酵素を産生する。
(G Tase)グルコシルトランスフェラーゼは、
ブドウ糖(グルコース)をグルカンにする酵素
(F Tase)フルクトシルトランスフェラーゼは、
果糖(フルクトース)をフルクタンにする酵素
グルカン・フルクタンは、粘着性の菌体外多糖類
★代謝(新陳代謝)とは、生きものが生きる<生体維持・成長・生殖>ために、
外界から取り入たもので行う一連の合成や化学反応のこと。(異化と同化がある)
★酵素とは、生体内で起こる化学反応をおこす働きをするもの。
6) ミュータンス菌はショ糖(スクロース・砂糖)を利用して、
粘着性の菌体外多糖類(グルカン・フルクタン)を作る。
たとえて言い換えると、
「ミュータンス菌は砂糖を食べて、白いネバネバの<ウンチ>をする。」ということ。
ショ糖(スクロース・砂糖)は、ブドウ糖(グルコース)と 果糖(フルクトース)が 結合したものです。
ブドウ糖(グルコース)は、(G Tase)により、グルカンになる。
グルカンは、結合様式と性状の違いによって、デキストランとムタンがある。
・デキストランは、水溶性で、凝集に関与。細菌のエネルギー源になる。
・ムタンは、水不溶性で、凝集と付着に関与。細菌のエネルギー源にならない。
果糖(フルクトース)は、(F Tase)により、フルクタンになる。
フルクタンは、結合様式の違いによって、レバン型とイヌリン型がある。
・レバンは、水溶性で、細菌のエネルギー源になる。
・イヌリンは、水溶性と水不溶性がある。細菌のエネルギー源になる。
ショ糖(スクロース・砂糖)= ブドウ糖(グルコース)+ 果糖(フルクトース)
ブドウ糖 ⇒<G Tase>⇒ グルカン → デキストラン(α-1,6結合 )
→ ムタン(α-1,6 結合+α-1,3 結合)
果糖 ⇒<F Tase>⇒ フルクタン → レバン(β-2.6結合)
→ イヌリン(β-2.1結合)
7) ミュータンス菌が作った、粘着性の菌体外多糖類とそこに集まって来た多くの細菌が
絡まって出来た、バイオフィルムが歯垢(プラーク)です。
★細菌のコミュニィティー構造を(バイオフィルム)と呼びます。一つの社会です。
台所ややホースのなかの ヌルヌルとしたヌメリも、(バイオフィルム)です
8) 歯ブラシなどで歯垢(プラーク)を除去しなければ、プラークは成熟し外側は
マテリアアルバ(白質)で覆われる。
これは強い洗口やウオーターピック<ジェット水流洗口器>で除去できる。
歯垢(プラーク)は洗口や<ジェット水流洗口器>で除去できない。
9)バイオフィルム構造になっている 歯垢の内部でミュータンス菌は、
スクロース(ショ糖・砂糖)だけでなく
グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、マルトース(麦芽糖)、などの糖類を
代謝することにより 乳酸(pH4.3)などの酸を産生する。
この結果、エナメル質の脱灰が起こる。これがう蝕です。
特に、プラーク内は唾液によるpHの緩衝作用が弱いためう蝕になりやすい。
たとえて言い換えると、
「ミュータンス菌は砂糖だけでなく、いろんな甘いものを食べて、酸性のオシッコをする」
★脱灰とは、カルシウムが出て行くこと。
★pH(酸性・アルカリ性の度合いを示す) アルカリ性 14 > 中性7 > 酸性0
10) 嫌気性のラクトバチラス(乳酸桿菌)は、象牙質やセメント質う蝕内で、
グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、マルトース(麦芽糖)、などの糖類を
代謝することにより 乳酸(pH4.3)を産生する。
11) エナメル質(ヒドロキシアパタイト)は、pH5.5で脱灰する。
乳歯、セメント質、象牙質、若弱永久歯は、pH5.5(5.7)~6.2で脱灰する。
『口腔保健管理』の教科P89で、象牙質の臨界pHは、pH6.7。
授業で、学生さんがわからないと悩んだところを補足しながら、更新しています。