口をあけてくれない方の口腔ケア②

口を開けてくださらない方への対応は、十人十色です。
学生さんが担当した方について、ご紹介します。

認知症の85歳 男性で、歯磨きは自分でしていると言いますが、磨いた形跡はない。
学生が磨こうとすると、「やめてくれ!」と怒鳴る。

さーどうしたものか・・・・
元、学校の校長先生だった方でした。
きっと、歯磨きなどされるなどはプライドが許さない。
時代的に、子供の仕上げ磨きなどが一般的でもなかったはず。

学生さんと話し合い、お願い作戦を立てました。
歯科衛生士学校の実習生で、歯磨きの勉強に来ています。
私が磨いてみますので、歯磨きの強さとか、よくないところを教えてください。

学校の先生ですから、教えるのは嫌いじゃないはず。

ワンクッション置くために、色違いの歯ブラシを数本用意して、
「〇〇先生、差し上げますから好きなものを選んでください。」と声を掛けました。

選んだ歯ブラシを使って、
「〇〇先生、いかがですか?
〇〇先生、痛みや嫌な感じはございませんか?」と
声をかけながら歯磨きすることができました。
若い学生さんを、助けてあげたいと思っていただけたようです。

初回は、咬合面と唇側面だけで手早く終了。
特に初回は慎重に、時間をかけて丁寧にかかわることが大切です。
嫌な思いを残さないこと。
何をしたかという具体的な内容は忘れても、感情の記憶は残りやすいのです。

「〇〇先生、ありがとうございました。勉強になりました。
今日は歯の表だけ磨きました。次は裏側も教えてください。」

この男性は、だんだん慣れて歯間ブラシ、舌ブラシも使って
仕上げ磨きさせていただけるようになりました。

ただし、気分の乗らないときは無理しません。
たわいのない会話を交わすだけで終わることもあります。

実習期間の最終日には
「〇〇先生、歯磨きしますね。」と声をかけると
自然に口を開けてくださっていました。

「今日で実習が終わります。お世話になりました。」
と伝えると「寂しいになるな、また来てな。」と言ってくださったようです。

 

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