主体的口腔機能向上サービス(在宅版一例)

北朝鮮地図

「主体的口腔機能向上サービス」を見た方から
「在宅訪問口腔ケアに行っているのですが、何かアイデアはありませんか?」
という、メールを頂きました。

人間の主体性って一人一人、毎日毎日、厳密にはその時その時、
立ち現われることですから・・・・
患者さんに向かい合って、お互い感じ合うことで引き出されるのだと思います。

参考になるかどうか、Tさんの口腔ケアについてご紹介します。

Tさんは、昭和6年生まれの男性です。
脳梗塞の後遺症があり、左麻痺。
全部ご自分の歯ですが、最近歯磨きの意欲がなく、奥さんも口腔ケアまでは手が回らないということで、Tさんを往診した歯科医院の先生から紹介され、訪問することになりました。

手入れが行き届いた庭がある、静かな2階建てにお住まいです。
自然な感じの庭には茶花が多く、玄関を入ると備前焼の鶴首に花一輪が活けられています。

二人のお子さんは結婚されて、奥様と二人暮らしです。
高校の体育の先生だったそうで、非常にまじめな方です。

初回の訪問は、H23年3月29日 歯科医師と同行。 
先生からの指示は、「歯肉炎の改善と、むし歯予防のため
残存機能を使ってなるべく本人に歯磨きをしてもらい
その後仕上げ磨きをする。」というものでした。

歯磨きが終わり、何か楽しみながらできる口腔リハビりはないか・・?

「好きな歌は在りますか?」「別に」「じゃー、知ってる歌は」
いろいろしゃべって、<ラバウル小唄><アリラン>を歌うことにしました。

歌詞をプリントアウトして持って行きました。
私も、ユーチューブを聞いて練習もしました。

歌って頂くと、言葉は聞きとりにくいし、ご自分が知っているところしか歌わない、
そのうち背中がだんだん丸くなり、疲れて最後まで歌いきることができない。
また、<アリラン>は、朝鮮語がいいと・・・

えっ?朝鮮語?そんなの知らんしどうすりゃいいの・・・・?
また、ユーチューブで朝鮮語<アリラン>を何度も聞き、カタカナの歌詞を作りました。

それを、毎回毎回歌っていくと、上手に歌えるようになりました。
(歌の前には、呼吸リハ、全身の体操、健口体操をしっかりします。)

Tさん、後にデーサービスに行った時のカラオケの18番になりました。

<アリラン>ということは、北朝鮮からの引き上げを経験されている。
そのことを、話してもらおうと北朝鮮の地図を用意して訪問しました。
そうしたら、いつもとは別人のように元気に話して下さるのです。

言葉も大きい声ではっきり、背中は伸びるし・・・
40分くらいたつと、もういいと言うTさんは、
訪問して1時間が経過しても語りつづけてくれるのです。

毎回同じことを語ってくれるのですが、新しいことも入っています。
徐々に思いだしてきたのではないでしょうか?
毎回帰って、Tさんが語ってくれたことを地図に、書き込んで行きました。
それを見ながら、また、話して頂く。
私はこの語りがリハビリであったことなどすっかり忘れ、
ただ興味深い話を聞かしてもらうおばちゃんです。

話しを聞かせてもらうのが毎週楽しみで、子どもの頃の紙芝居経験のようです。
自転車でやってくる紙芝居のおっちゃんを、空き地で待ちわびる・・・・

この語りは、Tさんが再度梗塞で入院した H25年5月まで続きました。

現在は、自宅療養になっていますが、言葉はほとんどありません。
続きはまた明日!!!乞うご期待

 

 

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