災害時のお口のケアについて
今年(2021年投稿)は東日本大震災の発生から10年です。そこで、今回は災害時の口腔ケアについて考えてみたいと思います。
2011年3月11日から数カ月、Twitterで多くの人が「口腔ケアをしてください。誤嚥性肺炎で命を失わないために」とつぶやいていました。それは、阪神・淡路大震災(1995年)の教訓からです。阪神・淡路大震災では、肺炎が震災関連死の最多数を占めていました。震災関連死者のほとんどが高齢者であったことから、この肺炎の多数が誤嚥性肺炎だったのではないかと考えられています。それから後の震災では、誤嚥性肺炎予防のため口腔ケア班が派遣されるなど、口腔ケアの重要性が唱えられてきました。
そこで、防災用品リストの中にいつも使っている「歯ブラシ」を加えることを提案します。そして次のページの「歯みがき、お口にケアはあなたの歯を守ります!」をコピーして歯ブラシと一緒に保管していただけると、もしものときにお役に立つと思います。
もう一つ加えるとしたら、「液体口腔ケア用品」です。これには使用方法によって2つのタイプがあります。
・デンタルリンス(液体歯磨き)口に含んですすいだあと、歯磨きをします。
・マウスウオシュ(洗口液)
歯磨きが終わったあと、口に含んでぶくぶくして吐き出します。
さらに加えるなら、キシリトールガム(シュガーレスガム)です。噛むことで、唾液がたくさん出ます。一時的に口臭のマスキング効果が期待されます。また、噛むことでストレスの軽減や緊張緩和にもなります。
私は2011年8月に気仙沼の避難所を回らせていただきました。歯周病で支援物資の歯ブラシが痛くて使えない方がいました。いつも使っている歯ブラシを準備しておくことが大切だと学びました。使い捨てのウエットティシュに「液体口腔ケア用品」を少し含ませて、歯、口の中、舌、義歯を拭くと急場しのぎの口腔ケアになることも体験しました。
「入れ歯の調子が悪く、配られた弁当が食べられない」「虫歯が痛くて眠れない」「歯周病で歯が抜けた」という皆さんにも出会いました。震災前に歯科治療を受けて下さっていたなら、こんな辛い目に合わなかったのにと感じる方も多かったのです。防災として、歯科治療しておくことが何より大切だと痛感させられました。このことは、要介護状態になるとか、入院を余儀なくされることに対する備えとも言えると思います。
「口腔ケアは命を救う」は、介護現場と同じです。
暑い時期で、脱水症予防にスポーツドリンクが
差し入れられていました。お菓子類も豊富にあり、歯磨き不足になると、あっという間に虫歯になることがあります。介護現場と同様です。
人前で入れ歯を外すのが嫌で、全く清掃していない人がいました。そのことで、口臭が気になり会話もしていませんでした。
ある避難所に届いた歯ブラシは、大きくて、毛が硬い物ばかりでした。
義歯を洗うには重宝しました。
配られるお弁当が硬くて、食べにくいという方のお口です。自宅で生活しているときは、おかゆを食べていたそうです。
軟らかいはずのハンバーグも、寒い時期は油が固まり、噛めなかったそうです。
<防災に必要と思われること>
健康な歯、口になる方法を知っておくこと。
健康な歯と口、適合の良い入れ歯で、しっかり食べることができること。
定期的歯科受診は、防災です