3、歯科衛生士の教育を担う者より
私はフリーランスの歯科衛生士です。
臨床の現場だけではなく、歯科衛生士教育の「歯科保健指導」で歯の磨き方はもちろん、食生活指導も教えています。
一般的に歯科衛生士は、甘いおやつの指導には熱心なのですが、食生活全体の指導には消極的な傾向があります。
というのも、食べ物の中でお砂糖が虫歯と最も深い関係にあるからです。この点について幕内先生は「歯科衛生士は木を見て森を見ず」と指摘されています。
おっしゃる通り!
私自身、先生の「食生活講座」を受講するまでは、砂糖だけを目の敵にして指導をしていました。それにもかかわらず、食パンの砂糖には気づいていませんでした。実にお粗末でした。
反省しています。
なので、歯科衛生士の卵を教育する立場になった今、木だけではなく森も見るような視点を持った学生を育てたい。これが私の目標です。
学生指導の現場から
まず学生の食生活の現状を知るために、入学してすぐに1週間の食生活調査を行います。
正確に記録を取るために、携帯電話の写真で撮影してもらっています。
時には、白ごはんが嫌いだという学生に出会います。
信じられないことですが、お菓子を食事として食べている学生もいます。
これは、主食が<ごはん>or<パン>という以前の問題です。
当然、便秘、生理不順などの健康問題を抱えることになりますよね。
子どもの頃からの食生活の状況を聞いてみました。
そこには、<コ食>(個食、孤食、粉食、子食、小食)と<給食>が生み出した、
現代の若者たちの姿がありました。
そこで学生の食事内容の善し悪しが簡単にわかる方法を紹介します。
私が実際に歯科医院で、患者さんに指導していたものです。
それは自分の食事記録を書いた表に、ラインマーカー(青・赤・黄)を引くだけの簡単なものです。
青は、ご飯。
赤は、パン、清涼飲料水、砂糖の入ったお菓子、スナック菓子。
黄は、カタカナメニュー。
このチェックをするだけで、学生の食事への関心が高まり、食事内容が変わっていきます。
そうして、自分が食べてきた給食についてふり返ってもらうと、
「私たちが食べた学校給食って、青が少なかったよね。」
「牛乳は何色かな?」
「弟の昨日の給食は、真っ赤でした。これって、危ないってことですか?まずいですよね!」
こんな声がかえってきました。うんうん、いい感性だな。
学校給食にも関心を持ってもらい、将来この問題に向き合っていく歯科衛生士に育ってくれることが願いです。
そうそう。歯科衛生士が自分で食事を作ることができなければ、指導などできない。そこで私の食生活指導の試験には、お弁当作りがあります。凝ったものである必要はなく、とりあえず日の丸弁当なら60点。豪華絢爛でもご飯がなければ0点です。
とにかく、学生にはよい食生活をすることによって健康になってもらいたい。
ですから、休み時間にも教室に出向き、清涼飲料水を飲んでいる学生に「お茶! 水!」、昼食に菓子パンやカップ麺を食べている学生には、「ごはん!ごはん!ごはん!」、手を変え品を変え「ごはんを食べろ!」と言い続けています。
毎日ご飯を炊き、ご飯を食べる。
これが、私の理想とする歯科衛生士の第一歩!