歯科保健指導、訪問口腔ケアに関係している歯科衛生士さんに
是非、読んで頂きたい一冊を紹介します。
また、生きにくさ、掴みどころのない淋しさ、空虚さを抱えて生きていると
感じている皆さんにとっても、その正体の手掛かりが見つかるかもしれません。
芹沢氏のは、現代社会きしみを、家族に焦点を当てることで問題提起をしています。
そこで語られる家族問題は、他の評論家の先生方とは違った捉え方で私を引きつけます。
今年の4月に出版されたこの本のテーマは、「かつては当たり前だった家族という対幻想(家族という一体意識、相互の思いいれ)が今、自然には成立しなくなっている。そのような現代の日本社会では、思想(意思)なくしては家族を維持することが出来なくなっている。」ということです。そこで、家族において「対幻想」(吉本隆明の概念)を生きるといういうことが、どういうことなのかが述べられています。
家族とは「自分のいのちの受けとめ手が一緒にいること」その意志であると語られています。
これまでの社会学であまり捉えられてこなかった、<いのち>に寄り添う家族論です。
・おぎゃーと生まれたいのちにとって、母親とはなにか
・児童虐待と所在不明高齢者、自殺と妊娠中絶は何を意味するのか
・人間が老いるとはどういうことか
これらに共通する問題が、「対幻想」の喪失した家族崩壊と捉えられています。
内なる自己本位主義的志向の人間が寄り集まった家族は、いのちの受けとめてではなく、
家族を「よるべない状態」へ追いやっていると述べられています。
私たちは、本来<いのち>にとっての家族とは何かを問い、
そこから家族をどう営みたいかを自覚し、
家族をしなければならない時代に生きているのだということを痛感しました。
またここで家族とは、必ずしも戸籍、血縁関係を意味しないという指摘は、目から鱗でいた。
私たちの目の前にいる患者さんも、歯科衛生士としての私たちも、
家族が問題になる社会に生きているということとを前提に
<いのち>を営まなければいけないということを教えられる一冊でした。