2012年1月18日放送、NHK クローズアップ現代
「歯科インプラントトラブル急増の理由」、ご覧になりましたでしょうか?
いまや歯を欠損した人の1割が装着しているインプラント治療ですが、始まった当初はトラブルが多かったと聞いています。しかし、現在は骨と結合のよいチタンが使われるようになって、歯を失った患者さんにとって非常に有効な補綴治療になったと思っていました。
ところが、国民生活センターに2006年度から5年間に、インプラント治療で被害を受け たトラブル相談は343件に達し、内容は歯や口腔の痛み、腫れ、しびれや、痛みが取れず夜眠れない、食べ物を噛めず体調を崩したなどさまざまです。番組によると、顎の動脈が切れて 患者が死亡する事故まで起きているそうです。
NHKが歯学部のある27の大学病院を対象にアンケート調査した結果、インプラント治療後の不具合を訴えてた患者がこの2年半で2700人以 上にのぼっています。その背景として大学病院が挙げた大きな理由は二つです。
「最初に治療した歯科医院での知識、技量不足」86%
「難しいケースにもかかわ らず無理な治療を行った」76%
この背景の一つは、コンビニの1・7倍という歯科医院の過剰。過当競争による収益低下で、
インプラント治療で収益アップを図る歯科医が増えたのだということです。
しかも、 多くの歯科医師はメーカーが主催する4日間程度の講習会を受けるだけでインプラント治療を行ってるのです。
インプラント治療を導入し年間2500万円の利益を上げた歯科医は
「インプラントをやっていただかないと経営が成り立たない。インプラントは歯科医師の救世主。打てば打つほど潤います。」
国谷裕子キャスター
「今のままではインプラント治療の信頼が失墜しかねませんね!」
東京歯科大の小宮山彌太郎教授
「歯科学生への講義は10年前から始まっているが、実習を伴った教育はどこの大学でも最近になってからやるようになりました。ま た、そういう教育を受けていない歯科医師もインプラントに目を向けるようになって、どこで学ぶかというと、業者主催の講習会だけ。耳触りのいいことだけ聞 いてやってしまう。」
国谷キャスター
「インプラント治療はこれまでの歯科治療とは大きく異なる治療と
捉える方がよろしいのではないですか?」
小宮山教授
「今までの歯科治療の範囲を超えた部分が多い。
歯科医のわれわれだけでは解決できない全身状態を把握できる力がいる。」
国谷キャスター
「技量を持っていない歯科医師にはこの治療ができないようにしてほしい。
公的な権限を持った所が認定するような仕組みが必要ではないでしょうか?」
小宮山教授
「日本のように、一人の歯科医師が多くの分野を手掛ける場所ではそれが求められると思う。」
2012年1月12日に、関係する5つの学会幹部が集まって、
安全のためのルールづくりに取り組むことが決まったそうです。