口が渇く人が増えている

「口が渇くんですが」と訴えて受診する人が増えています。
「歳のせいですよ」
これは、町医者にはNGワードだそうです。

「口を開けて寝てるんじゃないかな」
「夜中に汗をかくけど水を飲まないから」
ご家族は、いろんな原因を提案してくれます。

「ドライマウスじゃないかな?」
とりあえず提案してみます。
「どんな漢字を書くんですか?」「漢字?」。

町医者がまず聞くべきはどんな薬を飲んでいるか?
頻尿の薬、胃薬、抗うつ剤などのお薬の一部には
副作用として口渇があることがよくあります。

15~20種類ものお薬を飲んでいる方なら、
よくひとつやふたつ、そんなお薬が入っています。
その薬を止めるだけで口渇が治る人も多いです。

口渇を英語で言うと、ドライマウス。
ではドライマウスはどこの科に行くべきでしょうか?
内科? 耳鼻科? 口腔外科? 呼吸器科? 膠原病科?

実際これらの診療科をグルグル巡回している人も多い。

町医者の私は、お薬の副作用を除外できた場合、
ひとつだけ提案をしてみます。
「血液検査してみませんか?」

お金がないという人には、1項目だけでいいですと。
「1項目だけの血液検査?」
「そう、抗SS-A抗体という検査だけでもして下さい」

「シェーグレン症候群かもしれませんからね」
「ええ? なんですか、その病気?」
「もし抗SS-A抗体が陽性なら詳しく話しましょう」

長尾和宏 (ながお・かずひろ)

1958年、香川県生まれ。1984年に東京医科大学卒業、大阪大学第二内科入局。阪神大震災をきっかけに、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業、院長をしています。最初は商店街にある10坪程度の小さな診療所でした。現在は、私を含め計7人の医師が365日24時間態勢で外来診療と在宅医療に励んでいます。趣味はゴルフと音楽。著書に「町医者力」「パンドラの箱を開けよう」(いずれも、エピック)「『平穏死』10の条件」(ブックマン社)「胃ろうという選択、しない選択」(セブン&アイ出版)などがあります。ツイッターでもつぶやいています。

 

日々思うことこの記事のURL