『患者さんのエイジングに備える 高齢者への歯周治療と口腔管理』
監著 吉江弘正/吉成伸夫/米山武義
インターアクション株式会社 18,500円+税
A4 283ページのズッシリくる本です。
日本歯科新聞に書評を書かせていただきましたので、
原稿を掲載します。
名前が違っていたのがちょっと残念!!
この間違い結構多いのです。講演会とかの紹介でも(苦笑)
理恵ではなく、里恵です。
絵空事だと思っていた8020時代が到来する。
しかし、進歩は必ず新たな問題を孕む。
それに備えるための本が出版された。
前半にエイジングが進む患者さんに対する歯周治療と
口腔保健管理の基本的な考え方が説かれ、それを実践するために必要な医療と保健や福祉を
含めた広い知識が示されている。
重要なポイントはすべて見やすい図表でまとめているのが、大変ありがたくうれしい編集だ。
後半の実践編では、あらゆる面で個人差が大きい高齢者の状況を踏まえた症例が紹介されてい
る。多くの写真を伴う情報は、歯科診療室を出た時に悩むことになるであろう事柄に対する
ヒントが満載である。
各症例を振り返った「本例からの学び」では、改めて「Life」の3つの意味について考えさせら
れた。
1つ目は科学が得意とする生物学の「命」。
2つ目は一般的にQOL の向上として語られる、「生活」という側面。
3つ目は「人生」という哲学的次元。この「命」「生活」「人生」という人間の営みの全体像を
捉えて関わる先生方によって、患者さんの「尊厳」は保たれるのだと教えられた。
ところで皆さんは、長年通院していた患者さんが来院しなくなった時にどうしますか。
- 気に留めない
- 気にかかるが特に何もしない
- 電話連絡して近況を伺う
歯科衛生士ならリコールで担当した患者さんのことは気になる。
では連絡をしないのはなぜか?それは単に習慣がないから。
もしくは、どう対応してよいかわからない状態だったら困る、という思いがよぎるのではない
だろうか?だとしたら、一人の患者さんからで良いので連絡をしてほしい。
「お変わりございませんか?最近お顔が見えないので心配しています。」の一言は、
誰にとっても嬉しいはず。
もし、特別な配慮が必要な状態になっていたなら、何と答えたらよいのかという心配はいらな
い。即答する必要はないからだ。
状況を伺って改めて連絡すればよいのだ。
対応のヒントはこの本にある。そこから先は、患者さんや周りの方との話し合いで進んでいくものだ。
他職種連携は、目の前の一人の患者さんをどうするかという事に対応する地道なコミュニケーションで、自然に広がってくるのは経験上確かだ。
これから歯科は、すべてのライフステージを通して口腔健康管理マネージメントを担わなければならない。
それは決して高齢者に関わる歯科医療従事者だけに向けられたものではない。たとえ専門が小児歯科であっても射程に入れることは大切だと思う。