一般の患者としては、病院信仰がぬぐいきれないところがありますが、
流石にこれだけテレビから、健康番組や健康食品のコマーシャルがが垂れ流されると
それは本当か?誰が得をしているんだと、裏側を覗いてみたくなります。
これまで医師が書いた本では、近藤誠、米山公啓、永井明らが、
医療や健康に対する幻想を抱く私たちに、一石を投じたものを読みました。
先日、放射線技師をしている妹に紹介されて
久坂部 羊著『医療幻想 「思い込み」が患者を殺す』ちくま新書を読みました。
日本医療の実態とは、どのようなものなのか?
・抗がん剤でガンは治らない。
医師のいう効果があるは、数ヵ月程度の延命をもたらすにすぎない。
抗癌剤の認可基準は次の通り。
「投与後大きさが半分になり、一ヶ月後に転移がない患者が2割いればよい」
この程度のもの。
・点滴は水分、ブドウ糖、塩分で、腎臓の混合液でありがたがるものではない。
直接血中に入るので代謝で肝臓に負担をかけるので繁用はふさわしくない。
・骨粗鬆症の治療薬も効果的に考えるとほとんど無意味だ。
しかし収益性が高く、著者もかつて頻繁に投与していた。
・高血圧基準が厳しくなるのはガイドライン委員と製薬会社の癒着が噂される。
実際に04年には委員の医師9名に8億円が渡されていた。
・ガン検診の効果は日本以外では否定されている。
実際に医師にアンケートをとっても多くは受けていなかった。
こうした驚くべき実態に迫り、医者と患者の間にある壁の正体を明るみにする。
医師会・厚労省・マスメディアなどの生み出す幻想の実態を晒すことで、日本医療のあり方に問題提起しています。
私は全く著者のことを知らなかったのですが、様々な現場で働いているお医者さんであり、作家でもあるそうで、非常に読みやすい文章で一気に読めました。
しかし、最終的にはそれぞれの人間が、病や死をどう引き受けるか、どう生きるかが問われるのであろうと思います。出来れば元気な時から、関心を持っておくことをお勧めします。
2000年に発行された『健康不安の社会学』世界思想社は、健康ブームに対して、健康不安を煽ってくる社会に対する問題提起をした本です。
健康を指導する人間として、「健康」をどう捉えるかという問題を避けて通ることはできません。同時に自分の健康をどう考えるかを、横に置いておくことは不誠実だと思い、ちょっと立ち止まって考えていた頃でした。
平成12年の香川大学生涯学習センターで、著者である上杉正幸先生の講座を受講しました。
<健康な社会の問題点を考える -あなたはそれでも健康になりますかー>
この講座は、健康はよいことだという一般的なベクトルに、疑問を投げかけるもので、
人間の生き方を問うものでもありました。
最後、私たちには死があります。
死を選ぶことはできませんが、どう生きるかのの延長としての死は、選択できるところがあると思います。
特養での看取りの利用者さん姿を見ていると、教えられることがいっぱいです。
WDr.中村は、健康不安を吹き飛ばす、一つの道を示してくれているように感じます。
中村伸一著 『自宅で大往生 ~「ええ人生やった」と言うために~』中公新書
中村仁一著 『大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」のすすめ』幻冬舎新書
健康幻想、そして死を排除した社会で生きる私たちは、
何処へ行きつこうとしているのでしょうか。
カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』早川書房
臓器提供をするためだけに製造された、クローン人間の物語です。
そのクローン人間たちにも、普通の人間と同じ感情があります。
あまり文学作品を読まない私ですが、心の奥深く突き刺さってくるものがあり、
人間とはいかなる存在だろうかと、考えさせられました。