1) 歯垢を形成する細菌の代謝産物(酵素等)に、歯肉溝の組織が刺激されると、感染部位 には、感染防御機構として白血球 <好中球 → 単球(血管から出た段階でマクロ ファージと呼ばれる) → 好酸球・リンパ球」の順番> が集まってくる。 また、動脈血が増加し発赤・発熱が見られる。がこれが歯肉炎。
細菌をマクロファージなどの食細胞が、貪食する。好中球は貪食したことが刺激となっ て、活性酸素などの殺菌物質を産生し、放出する。
また、抗原提示細胞であるマクロファージは、抗原が侵入した情報を B細胞、T細胞 に知らせる。(抗原提示)
第一段階の好中球(多形核白血球)が細菌をやっつけにやってくる段階で細菌の増殖が 抑制されれば、炎症は局所に限局し、歯肉炎の段階に留まる。
2) しかし、好中球による細菌の浄化ができない場合、細菌のある者は、血流にのって全身 に伝播し、動脈硬化や心筋梗塞など、全身の臓器へ影響を及ぼす。
3) 次の段階で、マクロファージは異物を貪食するだけでなく、その情報をリンパ球に伝え たり、さまざまのサイトカインという炎症(情報)伝達物質を分泌する。
サイトカインは破骨細胞を活性化し、骨や結合組織を自己破壊して、歯周炎へと進行 する。つまり骨や結合組織を破壊する主因は、宿主自身の細胞が出すサイトカインなど 免疫反応による破壊。(敵から体全体を守っている)
4) 細菌の出す内毒素やスピロヘータの出す酵素自身にも炎症を継続し、骨を破壊する働き がある。またスピロヘータには歯周炎を起こした歯周組織の免疫抑制を起こす。
A.a菌の外毒素であるロイコトキシン(白血球毒)は、免疫細胞を破壊し、免疫反応を 抑制する。
逆に、宿主が優勢となるとマクロファージは増殖因子を放出し、骨や結合組織が再生さ れる。骨とバイオフィルムの距離は常に2.5mmに保たれる。
つ まりプラークが侵入すれば、そこから2.5mmの深さの骨はすぐに失われる。
これは細菌から骨を遠ざけ、全身への感染を防ぐため 。
5) また、歯周病菌の出す内毒素に反応してマクロファージが放出するサイトカインの量は 遺伝的に人により決まっていると言われている。つまり生まれつき歯周病になり易い人 がいるということ。
6) 最も歯周病に関連が深いとされる3菌種は、
プロ(ポル)フィロモナス・ジンジバーリス(P.g菌)
トレポネーマ・デンティコーラ( T.d菌)
タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f菌)
「レッド・コンプレックス」と呼ばれている。これらの菌に
アグリガティ(ゲイティ)バクター・アクチノミセテムコミタンス(A.a菌)
プレボテラ・インターメディア(P.i菌)
フソバクテリウム・ヌクレアタム(F.n菌)を含めて、
歯周病の発病に関連の深い菌種とされている。
グラム陰性菌は、内毒素を持っています。
プロフィロモナス・ジンジバーリス(P.g菌): 偏性嫌気性のグラム陰性桿菌。
蛋白分解酵素を産生し、細菌の内毒素であるリポ多糖体(LPS)を持っている。
トレポネーマ・デンティコーラ(T.d菌)(スピロヘータ―):嫌気性のグラム陰性菌。
らせん状の形。歯肉の細胞間の隙間から組織内に入り込み、さらに血管の中に侵入する。また、タンパク質の分解酵素と免疫抑制因子を産生する。
タンネレラ・フォーサイセンシス(T.f菌):嫌気性のグラム陰性菌。紡錘状の形態。
タンパク質の分解酵素を産生するだけでなく、細胞の外膜に内毒素を持っていて、酵素も産生する。
アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(A.a菌)《旧》アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス:通性嫌気性のグラム陰性桿菌。身体の免疫反応の際に働く細胞である「好中球」を壊す「ロイコトキシン」という外毒素(細菌が菌体外に産生する毒素)を産生する。
プレボテラ・インターメディア(P.i菌)嫌気性のグラム陰性桿菌。女性ホルモンで発育が促進されるので、思春期や妊娠したときには歯肉炎が起こりやすくなる。
フソバクテリイイウム・ヌクレアタム(F.n菌)嫌気性のグラム陰性桿菌。口腔内常在菌で口臭の原因。口内炎、上気道炎、胸膜炎など起炎菌となる。