§第二段
「1歳6ヶ月児が、思わず喜ぶ歯磨きソングを作りたい」 前回の集団指導で歌の威力を実感した私は、早速歯磨きソング作りに取りかかることにした。
メロディーは子どもの知っているもので、親もすぐに歌える簡単な歌詞がいい。思案の末にたどりついた歌は「こぶた たぬき きつね ね~こ」。動物4匹 というのが使いやすい。上顎左側、上顎右側、下顎左側、下顎右側と、うまく入れ込める。歯磨き法はこうだ。まず唇側面を”こぶた”と”たぬき”に分けて磨 く。
二度目の”こぶた”と”たぬき”で舌側面を磨く。”♪ブブブ ポンポコポン・・・”で各咬合面を磨く。二度目の”♪ブブブ・・・・”では、上顎前歯唇 側の歯間をつまようじ法で磨く。我が子や近所の子どもで試してみると、なかなか好評である。こうして歯磨きソングが完成した。
もう、乳幼児の集団指導で会場がざわめいても、私はひるまない。印籠のごとく、この歯磨きソングを歌えば一件落着。皆、私の指導に釘付けになってくれ る。この”泣く子も踊る”歯磨きソングをいろいろな指導で使った結果、い亜出は保育園にも定着し、保母さんが歌ってくれている。また、これを試した全国各 地の歯科衛生士仲間たちからは「うまくいった」「よかった、助かった」という絶賛の声が(4件だが)届き、私の輝かしい自信作となった。
この歯磨きソングの成功に気をよくした私は、指導で使う遊び歌の制作に取り組んだ。にらめっこ、アッカンベー、ベロベロバー、ブクブクペーなど、口腔機 能の発達に役立ちそうな遊びを工夫したり、口に触れられるのを嫌がる子どもたちには、顔に触れる遊びも考えた。
この場で実技をご紹介できないのが残念だ が、指導の話の中にこのような遊びを取り混ぜれば、親も子どもも本当に生き生きしてくる。
そんな様子を見ていると、人間のコミュニケーションは歌から始まったような気がしてくる。わらべうたには子どもを引きつける要素があり、子どもの成長に 応じて必要なものだと感心させられるのだ。
母親たちがわらべうたを忘れてしまった今、私もそれを語り伝える一人にならねばと思う。「え~?」とおっしゃる かもしれないが、歯磨き以上に大切な歯科保健指導かもと感じる今日この頃だ。